
TOP > 総力特集 > 個人の座標軸を持つことでワーク・ライフバランスは自然と付いてくる!…柴沼俊一氏
■柴沼 俊一さん
日本銀行にて、国内外の経済調査、金融機関のモニタリング業務に従事。在職中、経済産業省へ出向し、産業金融政策に携わる。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、国内外金融機関、電機メーカー、商社の全社戦略、組織改革の企画立案・実行支援に従事。かざか証券にて、オンライントレード部長、経営戦略・営業企画・商品部の担当役員として全社の経営に携わる。現在、アソーシエイトパートナー。2児の父。
著書「『コンサル頭』で仕事は定時で片付けなさい!」(PHP出版)。
【概要】
柴沼さんは毎日18時に退社して、息子さんたちをお迎えに行き、夕食づくりはもちろん家事全般をこなすワーク・ライフバランス実践者。現在、コンサルタントとして大活躍される一方で、大学院准教授、そして執筆とマルチに活動されています。今回の取材では、仕事に育児、そして休日の使い方まで充実されている柴沼さんに『育児と仕事の両立の工夫』や『これからの日本の働き方』についてお伺いします。
【コンテンツ】
1.柴沼さんの仕事と家庭の両立の工夫
2.現在の働き方を築くまで〜アメリカでの経験とマッキンゼーでのスキル〜
3.現在の働き方を築くまで〜朝型になること〜
4.子育てを通じて築いた生活スタイル
5.育児を通じて〜自身の成長と子供への想い〜
6.これからの日本。変わらざるを得ない働き方
7.生涯のテーマは“個人の座標軸を持つこと”

(WLB)現在、お子さんはおいくつでいらっしゃいますか?
(柴沼さん)二人とも男で、上が8歳、下が5歳で、上は小学生2年生になりました。下は年長で、来年の4月から小学生になります。
(WLB)私は娘が一人いるだけでもとても大変なので、男の子二人の育児をされているなんて尊敬です!
(柴沼さん)ありがとうございます。でも、仕事は仕事で成果を出さなければいといけないので、完璧な良い父親になろうとは思っていません。大切なのはバランスですよね。今日も実は昼12時まで家で仕事をしていました。私は朝6時から仕事をスタートして、できる限りやれる仕事を全部やり終えてしまい、後はミーティングに出るために出勤する、というスタイルを基本的にとっています。
今の会社の場合は、社内にいることが求められる組織ではなく、確実にアウトプットさえ出して仕事を回していれば良いという考えがあります。このような働き方を認めてくれる会社でないと、私のようなプレイヤーはたぶん通用しないと思います。
(WLB)仕事と育児・家事の両立はとても難しいと思うのですが、柴沼さんご自身が実行される上で工夫されていた点はございますか?
(柴沼さん)妻が外資系金融企業に勤めていて、仕事で夜は家にいないんですね。私が家事育児をやらざるを得ないので、19:30には子供を迎えに行かなければいけない、ごはんを食べさせないといけない、お風呂に入れないといけない、寝かしつけないといけないという、単にやらなければ回せない、といけないという現実がありました。とにかく、日常生活の中に仕事と家事・育児を全部詰め埋め込んで、マルチタスク(同時並行)で回し、のりきるしかなかったのです。しかし、そのうちに、さまざまな良いことが見えてきました。子どもが小さい時に一緒にいられますし、無駄な飲み会を入れなくても済みます。また、子どもと一緒に夜10時には寝てしまうので、朝5時にはどうやっても目が覚めてしまい、朝の頭が冴えている時間を有効活用できるため、生産性がとてもいいのです。
(WLB)必死になって現実に対処していたら、自然と生産性の高いことができていたということですね。
(柴沼さん)そうですね。現在の働き方を身につけるまでにこれまでの経験が役に立ちました。
(WLB)以前、アメリカに留学されていたという記事を拝見したのですが、その経験が、現在の働き方を身に付けるきっかけになったのですか?
(柴沼さん)そうです。アメリカではほとんどの社員が朝7時に出勤し、ものすごいスピードで仕事を終わらせて、夕方の5時・6時には帰宅、育児や家事をしているのを間のあたりにしました。私自身も実行したところ、そのスタイルが貫けると成果をしっかり出せることがわかったので、日本に戻ってきてからもこの定時退社のスタイルを続けて実行していました。
しかし、日本では出している成果は同じでも、夜中まで残業で仕事をしている人の方が上司からの評価が高いということに気付きました。このような環境下では、短時間で高い成果を出しても正当に評価されるかどうかは、分からない。そこで、会社に属さずに自分自身の能力だけで勝負できるプロフェッショナルとしてのスキルを身に付けるために、マッキンゼーというコンサルティング会社に転職しました。
(WLB)マッキンゼーに転職されてからも、働き方を変えずにそのままで18時に帰られていたのですか?
(柴沼さん)いいえ。転職してから2・3年はスキルを身につける必要があったため、それまでのようには18時に帰宅できませんでした。そのため、妻には「朝は自分が子どもを送るから、夜はお迎えをしてもらいたい。」と交渉し、3年間はそのスタイルで働いていました。マッキンゼーでの経験により、問題解決のスキルを身につき、現在の働き方で高い成果を出せるようになったのだと思います。
(WLB)マッキンゼー時代に学んだスキルについて、このインタビュー記事を読んだ方が参考にできるところがあれば教えて下さい。
(柴沼さん)「”何を解くべきか”の課題を明確に設定する」、「設定したら細かく分解する」、「分解したら必ず仮説を立てる」そして「その仮説を検証する」ということです。
例えば、「オフィスが手狭になったから、広いオフィスに移動したい」という要望がクライアントからあった場合、普通なら「別のオフィスを探しましょう」という話になると思います。しかし本質的な課題は「営業マンの数が増えた時に、どのようにすれば生産的な働き方ができるのか?」で、「部屋を広げること」が答えにはならないはずです。
仮に、それが不動産会社の営業部門のオフィスだったとしましょう。確かに人数が増えると手狭になるように感じます。しかし、営業マンは本来、各自の地域で営業ができればいいので、本部とやりとりさえできればオフィスにいる必要はないかも知れない。
このように、現象を掘り下げ、本質的な課題を見つけてから解くと、問題が解きやすくなります。これが、課題を設定して分解し、仮説を立てて検証するということのスタートですね。
(WLB)現象だけに気を取られると、直感的に浮かんだ方法が解決策だと思ってしまいますが、そこで一歩踏みとどまって、考え続け、課題を細分化して、本質的な課題はどこなのかを見つけて検証しなければいけないのですね。
(柴沼さん)そうです。必ず、「本質的な課題は何か?」と考え、課題設定をした上で解き始めれば、何度も何度も同じ問題で悩まされません。一旦解いてしまえば、その問題からは離れることができるのです。
(WLB)子育てを始められてから朝型になったとのことですが、午前と午後だとどのくらい能率が変わるのですか?
(柴沼さん)一般的に計ることはできないのですが、難しい問題は朝しか解けないのではと思います。数学的な公式に当てはめて解ける類の問題なら別に難しくないのですが、課題そのものの設定や、課題を分解して仮説を立てることは結構難しいです。だから、その手のものは朝に全部終わらせます。検証のためのデータ収集や、分析といった仕事は、いつやっても生産性は全然変わらない。逆に、ある問題が朝解けなかったら、夜まで粘っても解けないので、その問題は一旦忘れます。もしくは、解き終わるまで会社に行きません。会社に行くと話しかけられたりするので、集中力が途切れやすくなってしまうため、難しい問題は朝の時間に全部解いてしまい、午後は皆のために時間を確保しています。
(WLB)朝にその日の予定を立ててしまって、効率的に仕事を進められているのですね。
(柴沼さん)そうですね。必ず、朝の時間で必ず手帳の左側にto doを全部書き出して、手帳の右側に時間帯を書いて、「この3時間で1番、2番、3番、4番のことを全部3時間でやってしまい、残りのワークはミーティングの間に行おう」と決めて、18時には終ることができるように毎日決めて実行しています。
(WLB)to doリストは制限時間をしっかり決めておくのですか。
(柴沼さん)決めておきます。しかし、18時までの時間の全てがやることで埋まっていると、たいてい仕事は終わらないので、基本的にすべき仕事は午前中には終わるように設定しています。そして、午後は他の人たちのために時間を全部オープンにするようにしています。ミーティングなどは、その都度、対応すれば良いから頭が回ります。
(WLB)マッキンゼーでの経験と朝型が相乗効果を及ぼしているのですね。
(柴沼さん)そうですね。マッキンゼーにいたときに学んだ問題解決のスキルと朝型ライフスタイルが現在の高い成果と生産性の高さに結び付き、とても役に立っています。
(WLB)ちなみに奥様とは、ご結婚される前から共働きを考えておられたのですか?
(柴沼さん)最初は全然違いましたよ。結婚する頃は妻に、「家に入ったら?」と言っていましたし、妻も特に不満がないようでした。妻が外資系企業に入ったのも、共働きを意識していたからではなく、出産前までの数年しか働けなくても、最初から面白い仕事を任せてもらえるのではという理由でした。
しかし、結婚して子どもができた頃から、妻なりに自分の人生について考えることもあったんだと思います。妻と相談しながら、家事を半分ずつ担当することにしました。しかし、フィフティ・フィフティの論理というのは主観的なもので、分担をめぐり何度も議論をした結果が、今のライフスタイルです。、落ち着きました。
(WLB)では、今の生活パターンが理想の状態ということですか?
(柴沼さん)一応、毎日何事もなく過ごせるようになったという状態ですね。子どもの前で大喧嘩をすることもなくなりましたし(笑)
(WLB)そこに至るまで、どのくらいの期間かかりましたか?
(柴沼さん)2〜3年ですね。当初妻からは、「とにかく夜の時間が欲しい」といわれていましたが、私も夜の時間は、仕事もしたいし、飲みにも行きたかったため、その時間をめぐって、また、子どもが病気になったときにどちらが看るかでも揉る。でも結果的には、比較的時間の融通の効く私が多めに対応することで解決しました。当然紆余曲折はありましたよ。

(WLB)以前、育児をされている女性にお話を伺った聞いた際に「視野が広がった!」「人生の密度が濃くなった!」などのお話を聞かせていただいたことがあったのですが、柴沼さんが育児をされて変わったこと、育児で得たものが仕事でも活きた経験などはございますか。
(柴沼さん)そうですね。育児を経て変わったことは、他の人に対して過大な期待を抱かなくなったこと、コーチング力が上がったことですね。
昔は、付き合いやすい人と付き合いにくい人が自分の中にありました。特に自分とあまり反りの合わない人に対しては、自分の思った通りに物事が運ばず、不満が溜まることも多々ありました。しかし、子どもはこちらの思った通りのことをしてはくれません。それどころか、自分の意図と全く反対のことをします。子どもの場合、「泣くな」といえば泣くし、「するな」といえばする(笑)。それに比べたら、ちょっと合わない人がいて、思い通りに物事が運ばないくらい大したことないかと思えるようになりました。
また以前、私は同僚や部下に対して、厳しく物事を言うことができなかったのですが、子どもにダメなことは「ダメ」というようになってから、同僚や部下に対しても適切な指導をストレートに出来るようになりました。子供を通して自身が成長することができましたね。
(WLB)お子さんに将来どのような大人になってほしいですか?
(柴沼さん)そうですね。レールの上に乗っても、レールから外れても楽しんで生きる人になって欲しいですね。レールを全力で走ったからといって、それが楽しい人生かどうかというのは別の問題かもしれない、と最近思うんです。だからこそ、自分の人生を楽しもうと思っていますが、子ども達には、必ずしも自分と同じ道を歩ませたいとは考えていません。とにかく、ある程度までは生き延びる術は教えるつもりですが、あとは自分で好きにして、どんな人生を歩むにせよ楽しんで欲しいですね。
(WLB)お子さんはたくましくなりそうですね!
(柴沼さん)いやいや…。それが全然たくましくなくて困っています。都会っ子でして。本当に最近は、親離れができていないせいか、どこかの奥さんみたいに電話してきます。「パパ、今日は何時から何時まで電話できるの?」というように。「お前は奥さんか!」って(笑)
(WLB)ラブラブですね!
(WLB)お子さんにとっては、その電話がとても大切なことなのでしょうね。
(柴沼さん)きっと不安なのだろうと思います。電話をして、どこかで繋がっていることを感じて安心したいのかもしれないですね。いつかは序々に親離れしていくのだとは思います。でも、早く一人前になって離れてくれれば、私も休んだり、やりたいことをたくさんできるので助かります(笑)

(WLB)ちなみに、育児を終えたらやりたい!ということは何かありますか?
(柴沼さん)今後は、アドベンチャーレースや長期間海外で仕事をしたりしたいですね…。今は自分をリミットしているので、もっと自由に一ヶ月かけてくらい世界旅行したりもしたいですね。
でも、結局、子どもも連れて行っちゃいそうです…。意外に子離れできていないのは、私の方かもしれないですね(笑)!あとは、なるべく人とは違ったことをやりたいと思っています。そういう意味では、やりたいことは今も並行平行してやっていますね。
(WLB)現代の日本の残業だらけの状況に対しては、国民性として認めるしかないと思われますか?
(柴沼さん)これからの日本は変わらざるを得ないと思います。日本では、経済の成長が止まってしまっていて、より高い収益を目指して、海外に企業が次々と海外へと移っています。そうすると、今後は国内だけの転勤にとどまらず、海外でも仕事をする機会が増えてきます。労働者もBRICsやNEXT11などの国々に出て行かなければならなくなります。
しかし、そのような状況になった時に、海外に転勤するのではなく、国内にとどまりたいという方も出てくると思います。特にメーカーの方々ですね。会社の命令に反して国内にとどまるためには、会社に属さずに自分自身の能力のみで生きていけるプロにならざるを得ません。また、会社に属さない分のリスクヘッジをするために共働きが前提になると思います。共働きの場合は、結果として私と同じような生活をせざるを得なくなると思います。
(WLB)海外に出て行かれた方も海外の文化に触れれば、やはり共働きが当たり前という価値観になるのでしょうか?
(柴沼さん)日本の企業から派遣されて海外に転勤された方はそのような考えにならないと思います。それなりの手当てがあり、共働きの必要性に迫られていないので、旦那さんが働いて、奥さんは現地で専業主婦として子育てをするというスタイルのままだと思います。
(WLB)最後にこのインタビューを読んでくださる方々に向けて一言お願いします。アウトプットを高めるためにやるべきことでオススメのことはありますか?
(柴沼さん)自分の人生のゴールをしっかりと設定することです。
私はいつも、10年後の姿を描いていて、それを基に5年や1年ごとに区切って目標を決めています。そして、どのように実行すべきかを明確にします。「エンプロイド(被雇用者)としてやらなければいけないこと」、「セルフエンプロイドー(個人の契約者)としてやらなければならないこと」、「ビジネスオーナーとしてやるべきこと」、そして「家族のためにやるべきこと」の4つの観点に分けて、「各々でこれは必ず一年間で達成させるぞ」ということを12月から準備して、1月1日に必ずやりとげることとして何個か決めます。
そうすると、自然と日常の時間もあれをもやりたいから今のうちにこれも終わらせてようしてしまおう!となり、自然にアウトプットがどんどん高まってきます。
(WLB)ちなみに、去年達成されたことはどのようなことだったのか、可能であれば教えていただけませんか?
(柴沼さん)去年は、「本を出す」ということを決めて出版しました。また、「大学院で授業をやりたい」と思っていたら、自然と声がかかって実現できました。強く願っていると物事は良い方向に向かっていくのかもしれませんね。
逆にできなかったことは「料理」ですね。「海外でホームパーティーを行うために、一通りの和食をご馳走できるようする」と書いたのですが、全然できていないですね。一応、あさりのお味噌汁、唐揚げ、餃子、鍋など、料理はほとんど作れるのですが、見栄えが良くないので、人様には出せないですね。これがちゃんと作れるようになれば、ホームパーティーもできるのではないかと思っています。こればかりは、まだ必要に迫られていた状況ではないので、なかなか難しいですね。
(WLB)柴沼さんのお話をお聞きし、これから自分自身にスキルを身に付けていかないといけないというのをヒシヒシと感じました。
(柴沼さん)やはり、個人としてどう生きるかというのをしっかりと決めることが武器になると思いますね。プロとして生きる覚悟を決めることができれば、ワーク・ライフバランスも自然とついてきます。組織に属するというよりも、組織から必要だと思われ人材になることが一番大事ですね。個人の座標軸を持つことが生涯のテーマだと思います。
個人の座標軸を早めにつくることをお勧めします。
