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自分のためにも、育児休暇をとるべきです…佐藤健氏

佐藤さんは、大分県総務部長でもあり、3人の子を持つ父親でもあります。
第三子の出産は、県議会の委員会の日と重なってしまったのですが、
県議会の議長様の「子どもの誕生という人生の一大事と議会への出席を比べること自体がおかしいよ」
という言葉で、育児休暇取得に一歩踏み出すことができたそうです。

今回は、素敵な方々に囲まれ、自然体でワーク・ライフバランスを実践されている
佐藤さんにメールインタビューを行い、Q&A方式で答えていただきました。

【コンテンツ】
1.大分県総務部長というご職業
2.育児休暇は誰のため?
3.育児休暇をとる時のポイント
4.ライフでこの上なく幸せな瞬間
5.育児を通して学んだもの
6.育児休暇をとろうか迷われている方へ
7.編集後記


1.大分県総務部長というご職業

1
(WLB)佐藤さんは、大分県総務部長というご職業ですが、どのような職務内容か教えていただけますか?
(佐藤さん)総務部では、人事・予算・組織といった内部管理の仕事を扱っています。一般の企業にも総務という部署はあると思いますので、それをイメージしていただければ良いと思います。知事室も総務部に属しますが、一般の企業に社長室があるのと同じですね。違う点があるとすれば、議会対応かと思います。
その総務部の部長ということなので、知事や議会、他の部局とやり取りをしながら、県政全般に目配りをする立場になります。

(WLB)育児休暇を取られる以前はどのような働き方をされていたのでしょうか?
(佐藤さん)私の場合、育児休暇といっても土日を入れてわずか10日という期間ですから、休暇の前と後で特に働き方や生活が違うということはありません。
もう少し長いスパンで見ると、第一子(長女)が生まれた頃は、いわゆる「霞ヶ関の住人」であったため、毎日帰りは午前2時、3時、土日出勤も当たり前という生活でした。その頃に比べると、今は「ワーク・ライフバランスな日々」ですね。


2.育児休暇は誰のため?

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(WLB)育児休暇を取ろうと思われたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
(佐藤さん)今回、私が取得したのは、出産補助休暇3日間と育児参加休暇5日間(いずれも有給休暇)ですが、これは、第二子(長男)が生まれたときにも取っていますので、一大決心をして取ったというより、当然取るものと考えていました。
第一子(長女)のときは、里帰り出産していたところに顔だけ見に行ったような格好で、1日か2日しか休まなかったのですが、第二子のときは、今回同様10日間の休みを取りました。
第二子の時も里帰り出産だったので、休みの間私が家事をすることはほとんどありませんでしたが、生まれたばかりの子どもと過ごす時間は何とも贅沢で、育児休暇というのは、妻や子どものために取るというより、自分自身のために是非とも取るべきだと、そのとき思いました。
大分県として、「子育て満足度日本一」「男性の子育て参画日本一」を目指していることから、「総務部長として、職員に模範を示すという意味もあって取得したということですか」と聞かれることも多いのですが、そういうつもりで取ったわけではないのです。ただ、そう聞いてくださる方をがっかりさせてしまうのは申し訳ないことなので(笑)、「結果としてそういう効果があるとすれば喜ばしいことです」とお答えすることにしています。


3.育児休暇をとる時のポイント

(WLB)育児休暇を取られる際の職場の反応についてお教え下さい。
また、佐藤様がその反応をどう感じられたかをお教え下さい。
(佐藤さん)反対する人はいませんでしたが、職員は「大丈夫ですか?」という感じだったのではないかと思います。部長が居ないと仕事が困るというより、知事や議会との関係は大丈夫かと心配してくれたのではないかと思います。まあ確かにそういう心配をするのも無理はないのかなと思いました。
ただ、私の上司である知事・副知事には、第三子が生まれると分かったときから、それとなく休みを取ることをほのめかしていまして、「それは結構なことだ」という反応を予めもらっていましたので、私自身はあまり心配していませんでした。

(WLB)育児休暇を取られる際に一番苦労された点は何でしょうか?
また、どのようにして乗り越えられたのでしょうか?
(佐藤さん)やはり、部長という立場にある以上、自分が10日間休むことによって県庁内外の仕事に影響が出ないよう準備をしておく必要がありました。
まず、休暇期間中に予定される会議等について、日程の変更が可能なものは前後にずらし、不可能なものは、欠席あるいは代理出席の了解を取り付けました。例えば、「部長会議」という知事・副知事と全部局長が集まる会議は、総務部長が司会を務めることになっていますが、これは総務部審議監(次長に当たります)に代役を務めてもらいました。また、職員組合との交渉もありましたが、これは欠席させていただくことで了解してもらえました。また、休暇後に控えていた大きな会議については、それらに関する事前の打ち合わせを、できるだけ前倒ししてやっておくようにしました。
それから、上司や同僚に「休んでも大丈夫なように準備をしているのだ」という安心を与えることも、休業取得の環境整備として重要なポイントだと思います。
私は以下の3点について説明をし、了解を得られるようにしました。

1:休暇中も、職場とはメール・携帯電話で連絡を取り、業務に支障は生じさせない
2:緊急の場合は、登庁する。特に、危機管理に関する事態には登庁して対応する
3:期間中に開催される会議は、審議監が代理出席。緊急の決裁も、審議監が代決

(WLB)育児休暇を取る際に、力になってくれた方、支えになってくれた方とのエピソードなどはありますでしょうか?
(佐藤さん)休暇予定期間中の会議は、できるだけ日程を変えてもらったのですが、県議会の常任委員会の日程は、さすがに私一人の都合で変えることもできません、そこで、常任委員会の翌日から休暇を取る予定にしていました。
常任委員会は、出産予定日の5日前だったので、大丈夫だろうと思う一方、万が一重なった場合の心配をしていました。たまたま県議会議長と雑談していた際、ポロッと「重なったら困るなあと思っているのです」と話をすると、「そんなもの議論の余地はないじゃないか。常任委員会の説明なんか、代理で大丈夫。子どもの誕生という人生の一大事と議会への出席を比べること自体がおかしいよ」と。この議長の一言には大変勇気づけられました。
結果としてその「まさかの日」に生まれることになったのですが、その日に迷わず「休む」と即決できた背景には、議長のこの一言があったのです。
ちなみに議長は、一番下は中学生の4人のお子さんの父親です。経験者ならではのお言葉だったのではないでしょうか。


4.ライフでこの上なく幸せな瞬間

3(WLB)育児休暇中はどのような生活をされていたのでしょうか?
(佐藤さん)午前と午後に最低1回はメールチェックする、と職員に約束していたので、その時間は取るようにしましたが、あとはひたすら家事をしていました。
朝起きて、朝食の準備をして、長女・長男を起こして朝食を食べさせ、長女を小学校に送り出した後、長男を保育園に送り、洗濯をして、朝食の片付けをして、次は昼食の準備、昼食が終わったら、それを片付けて、夕食の準備、夕方には長男を保育園に迎えに行って、洗濯物を取り込んで、家族に夕食を食べさせて、子ども達をお風呂に入れて、絵本を読み聞かせしながら寝かしつけて・・・。
子供達が寝た後に、ゆっくりお風呂に入ってビールを一杯。これを楽しみにひたすら頑張るという感じでしたね(笑)。
職場からのメールに対しては、簡単なものはすぐに返事を書きましたが、ちょっと考えるものについては、翌朝少し早く起きて返事を書いていました。
メールでのやりとりは、お互いにポイントを絞ることを迫られるので、かえって効率がいいなあとも思いました。メールと携帯電話を活用すれば、10日程度の休みは支障なく乗り切れるというのが、今回実践してみての確信です。
第二子のときの育児休暇では、家事は義母がやってくれましたので、私は生まれた子どもと触れ合ったり長女と遊んだりするのが主でしたが、今回は、家事を私がやり、妻と子どもが心置きなく一緒にいられるようにしたという格好になりました。そんな中、妻が食事をしているときやシャワーを浴びているときなどに赤ちゃんを抱っこしている時間が、この上もなく幸せな時間でした。

(WLB)ライフにおいて、育児で経験したことが活きたということなどはありますでしょうか?
(佐藤さん)現時点で、仕事以外の時間は、ほぼ子どもと過ごすか家のことをしている時間ですので、育児がそれ以外のライフにどう活きたかというのはちょっと言いづらいですが・・・飲み会で育児・家事について語れるようになったのはプラスですかね(笑)。
それは冗談としても、育児・家事をすることで、ライフに充実感を持っていることは事実です。趣味や勉強の時間が以前に比べて大幅に少なくなっているのはその通りですが、今の時期は、これでいいのではないかと思っています。先輩からは、「子どもがお父さん、お父さんと言ってくれるのは、たかだか10年。そのうち、頼んでも一緒にいてくれなくなるよ」と。後で後悔しないように、今は子どもとの時間を大切にしようと思います。


5.育児を通して学んだもの

4(WLB)ワークにおいて、育児で経験したことが活きたということなどはありますでしょうか?
(佐藤さん)育児を通じて得たことは、自分では意識していないことも含めていろいろあるのだと思いますが、1つは、人を動かすときには共感が必要だということ。子どもは、こちらの思い通りには動いてくれません。「〜しなさい」と言っても、言うことをきかないときはきかない。そのときに、子どもの気持ちに寄り添うというか、子どもの気持ちにこちらが共感していることが伝わると、子どもも動いてくれることが多いように思います。仕事をする上でも、相手の気持ちに共感すること、こちらの思いに共感してもらうことは、とても大切だなあと思っています。
また、家事を通じては、「段取り力」の大切さを痛感しました。炊事・洗濯を時間内にこなしていくのは本当に大変で、それこそ段取りを間違うと、食事の時間になっても用意ができていない、保育園のお迎えの時間に間に合わない、といったことになってしまいます。
今回の休暇の当初は、とにかくやれることを片っ端からやっていくという感じだったのですが、そのうち、「洗濯機を回している間に食器を洗って、洗濯機が止まったら、食器洗いが途中でもまずは洗濯物を干して、・・・」と最も効率よく時間を使う作業手順が自分の中で出来上がってきました。
近頃作成した総務部の「超勤縮減宣言」は、この経験をもとに「段取り力」をキーワードとして組み立てました。

(WLB)現在、仕事と子育て、家事との両立をされているとのことですが、両立のコツなどはございますか?
(佐藤さん)私の場合、はっきり言って動機が不純で、美味しくお酒を飲むためにというか、お酒を飲んでも文句を言われないようにするために家事をするようになった、というのがホントのところです。ワーク・ライフバランスについて、高い志があったというワケではないのです(笑)。
ただ、今回の休暇でも思ったことですが、家事というのは、とてもクリエイティブというか、工夫すればするほどカイゼンされるというおもしろさはあると思います。段取りよく仕事ができると、「オレって家事の才能あるかも」と気分がよくなり、夜の一杯もまた格別、と(笑)。
とにかく、自分なりの楽しみを見つけるのが早道ではないでしょうか。


6.育児休暇をとろうか迷われている方へ

(WLB)現在の日本では、まだ男性の育児休暇・育児休業の取得率が低く、男性の育児が珍しいと考えられていますが、そのような状況をどのように考えておられますか?
(佐藤さん)私の身の周りを見ると、育児休暇は取らないにしても、育児を頑張っているパパはたくさんいます。若い世代には、特に男性の育児が珍しいという感覚はないのではないでしょうか。これから確実に、世の中の雰囲気は変わっていくと思います。

(WLB)「育児休暇を取りたいが、職場で認めてくれない」と一歩踏み出せずにいる方々に向けてメッセージをお願いいたします。
(佐藤さん)生まれたばかりの子どもと過ごす時間は、本当に幸せです。これを母親だけに独占させる手はありません。奥さんや子どもさんのために取らなければという義務感ではなく、人生の中でめったにない「幸せな時間」のため、自分のために育児休暇を取ってみてください。
そのための環境整備は必要ですが、以前に比べれば、社会的認容度は大きく上がっていると思います。
早めのアナウンスと周囲に安心感を与える周到な準備をした後は、ほんのちょっとの「勇気」だけです。日頃頑張っている皆さんのことを、周囲もサポートしてくれるはずです。メールと携帯電話を活用すれば、休むことによる周囲への影響も相当程度減らせます。
皆さんの後に続く後輩のためにも、是非一歩踏み出してみてください。

(WLB)お忙しい中、貴重なお時間とお話をいただきありがとうございました。

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7.編集後記

今回はメールインタビューという初の試みだったのですが、佐藤様の文章は要点が整理されて、大変スムーズに理解が進みました。佐藤さんの物事を分かりやすく伝える手法によって、周囲の方が安心されたことも大変納得がいきます。トラブルなく育児休暇を取ることができた要因の一つなのだろうと感じました。
また、佐藤さんのご家族との写真がとても素敵で、私どもも思わず笑顔になってしまいました。